ウサギの診療

ウサギの専門医療
ウサギは、野生では被捕食者であることからストレスに弱く、骨がもろいため大暴れして怪我をすることがある動物です。
また犬猫と異なり、もともと巣穴で生活する、完全草食動物であることから、ウサギ特有の病気も多くみられます。
当院は、ウサギの診療に専門知識と技術を有しています。
爪切り、毛刈りといったケアのみでの診療から飼育相談、避妊・去勢手術、病気の診断・治療、外科治療まで広く対応します。
ウサギの飼い主様にお伝えしたいこと
- 不意に大暴れをして怪我をすることがある
ウサギは後肢や背中の筋力が強い一方で骨が軽く割れやすいため、大暴れした際に骨折や脱臼が生じてしまうことがあります。背骨が折れてしまった場合は、命に係わる問題となります。
スタッフ一同ウサギの扱いには十分気を付けて診療を行います(例えば、タオルで顔を隠しながら診察を行う、診察台ではなく床で診察を行うなど)が、ウサギの想定外の動きにより事故が起こりえます。
不幸な事故が起きてしまわないように、そして動物病院でウサギが受けるストレスを減らすために、日頃からウサギと良く触れ合ってもらい、触られることに慣れてもらうことが重要です。
- ウサギのフードは牧草がメイン
ウサギにとって主食は牧草であり、ペレットはあくまでサプリメントです。
ペレットは栄養不足にならないために必要なものですが、与えすぎると牧草の摂取量が減り、食物繊維不足から胃腸障害を頻繁に起こしたり、肥満、歯科疾患になりやすくなってしまいます。
1日当たりのペレットの量は、成長期のウサギで体重の2.5%、成ウサギで体重の1.5%、高齢のウサギで体重の1%が目安です。ただし、運動量や体重、病気の有無によって実際に必要な量は異なりますので、詳しくは獣医師にご相談ください。
- 歯の病気が多い
ウサギは、前歯も奥歯も常に成長し続ける、常生歯を持っています。顎を左右に動かして咀嚼する際に、上下の歯を擦り合わせて歯が削れることで、伸び続ける歯は正常な長さに保たれています。
牧草を食べる時よりもペレットを食べる時の方が、この左右の咀嚼運動が少なくなるため、歯が十分に擦り合わされず、異常な方向や角度に歯が伸びてしまうことで、歯の疾患になりやすくなると考えられています。
症状として、口をモゴモゴさせて気にしている、急な食欲不振、よだれが見られます。
小型ウサギでは、生まれつき歯の咬み合わせが悪い子もいるので、気になったらすぐの来院をおすすめします。
- グルーミングして自分の被毛を食べると、胃腸障害を引き起こす
グルーミングして飲み込んだ自分の被毛は消化されません。牧草をしっかり摂取しており、ストレスもなく胃腸が健康な状態であれば、便と一緒に出てくることも多いですが、飲み込む被毛の量が多かったり胃腸機能が十分でないと、胃の中で毛が固まって毛球となり、それが消化管で詰まって急に亡くなってしまうこともあります。
急に元気、食欲、排便がなくなってぐったりしている場合は、緊急の可能性がありますのですぐに来院してください。
換毛期はブラッシングをなるべく行うようにしてください。
- 女の子は子宮癌が多い
女の子のウサギは、子宮癌が非常に多いです。早いと2~3才でみられ、5才を過ぎてくると非常に多くなってきます。
初期は無症状であることも多く、血尿がみられるのも一部のウサギだけです。そのため、食欲が低下してからでは肺や骨、腹腔内転移がすでに起きてしまっていることも多々あります。
避妊手術で予防することができますので、ご質問がございましたら獣医師にご相談ください。
ウサギの避妊・去勢手術
妊娠させないということだけでなく、高齢になってから起こるかもしれない病気の防止や、マーキング、攻撃性といった問題行動を防止することが目的です。ウサギが複数羽いる場合は、仲良く暮らしてもらうという目的もあります。
<避妊手術>
・妊娠させない
・子宮、卵巣や女性ホルモンに関連した病気を防ぐ
子宮癌や乳腺腫瘍など
・女性ホルモンに関連した問題行動を抑制する
攻撃性、マーキング、巣作り行動(首の毛を抜く)、穴掘り行動など
<去勢手術>
・妊娠させない
・精巣や男性ホルモンに関連した病気を防ぐ
精巣腫瘍、陰嚢ヘルニアなど
・男性ホルモンに関連した問題行動を抑制する
攻撃性、マーキングなど
避妊手術とは
腹部中央を開腹し、卵巣と子宮を摘出する手術です。日帰りで手術は行います。
手術時間はおよそ1時間です。
術後はエリザベスカラーを着用してもらい、1週間後に抜糸をします。
去勢手術とは
陰嚢の前の皮膚を切開し、精巣を摘出する手術です。日帰りで手術は行います。
手術時間はおよそ30分です。
術後はエリザベスカラーを着用してもらい、1週間後に抜糸をします。
手術の注意点
・全身麻酔
全身麻酔が必要となりますので、リスクは0%ではないと言えます。
当院では、できる限り100%安全な手術を行えるように、術前にしっかりと動物の体調を確認してから手術を行います。
また、手術中は生体モニターにより心電図、血中酸素飽和度、血圧、体温、換気状態などに異変が起きていないかをしっかりと確認しながら、手術を安全に行えるように細心の注意を払っています。
術後も麻酔からきちんと覚めてもらうまで、動物をしっかりと見守ります。
・傷口の問題
縫合した場所が、化膿してしまう可能性がまれにあります。
術後1週間は、エリザベスカラーで傷口をなめてしまうことを防ぎつつ、お薬で化膿しないように対処します。
・肥満
手術後は、肥満になりやすくなります。
手術前と同じ食事量、カロリーでは太ってしまうため、術後落ち着いたら、低カロリーのフードへ変更していく必要があります。
・術後の食欲低下
ウサギはストレスを感じやすい動物であり、動物病院という慣れない環境や、手術、エリザベスカラーなどによるストレスで食欲が落ちてしまうことがしばしばあります。術後、通院による点滴治療や強制給餌が必要となることがあります。
避妊・去勢手術をする時期
生後6か月齢ごろ~2才
6か月齢ごろ~2才が適しています。
早いと2才以上で子宮癌が発生することがあるためです。
ただし、2才以上であっても手術が行えない、手術が無駄なわけではないので、子宮癌を予防するためにも手術を行うことをおすすめします。
避妊・去勢手術の流れ
- 1.術前診察
- まずはLINEで診察の予約をお取りください。
診察を行い、血液検査、レントゲン検査によりウサギの状態を確認したうえで、手術の予約を別日に取ります。
手術前の注意事項については、術前診察でご説明いたします。
- 2.手術前日
- ウサギは、手術・麻酔前に絶食は必要ありません。
いつも通り食べてもらい、いつも通りの生活を過ごさせてあげてください。
- 3.手術当日
- 指定の時間(午前中)にご来院ください。
ご来院いただいたら、体調や状態を確認してからお預かりします。
- 4.避妊・去勢手術
- 全身麻酔下で避妊・去勢手術を行います。
手術中は、生体モニターにより心電図、血中酸素飽和度、血圧、体温、換気状態などに異変が起きていないかをしっかりと確認しながら、安心・安全な手術を心がけます。
手術時間はおよそ30分~1時間になります。
- 5.お迎え
- 避妊・去勢手術は基本的に日帰りで行います。指定の時間(夕方)にお迎えにいらっしゃってください。お迎え事には、退院時の注意事項についてお伝えいたします。
- 6.帰ってから
- 帰宅後は、すぐに食事、飲水を開始してください。また、数日は安静にしてください。
特別なことはせず、生活はいつも通りで構いません。
傷口を舐めてしまうのを防止するために、術後はエリザベスカラーを着用してもらいます。
ストレスになっていそうな場合は、日中は人が見ていられる範囲内でエリザベスカラーを外す時間を作ってあげてください。
食欲や排便がいまいちな場合は、病院までご連絡ください。
- 7.抜糸
- 手術から1週間後に抜糸を行います。
抜糸まで、エリザベスカラーは着用をお願いします。
ウサギの投薬方法
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口に直接入れる方法
バスタオルを地面に置いて、ウサギをくるみます。
くるみ方は、まず後方、側方の順に巻きます。最後は前肢を隠すようにして、顎の下で前方を巻きます。
シリンジを切歯の横から口の中に入れ、薬を押し出します。 -
果物にのせる方法
果物が好きであれば、りんごやバナナに粉薬をかけて与えます。
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葉野菜にのせる方法
葉野菜が好きであれば、手で葉野菜を差し出しながら、葉野菜に少しずつ液体の薬を垂らして与えます。
ウサギの健康診断
ウサギは表情がわかりくく、病気の発見が遅れやすい動物であるといわれます。そのため、1年に1回、定期的な健康診断をおすすめします。
特に歯科疾患に関しては、症状がない段階で早期発見することができれば、進行を遅らせることができます。
身体検査
体重測定をしてから視診、触診、聴診により、異変がないかを鼻の先からしっぽまでしっかりとチェックします。特に肥満がないかどうか、歯に異常がないかどうか詳しくチェックします。
血球検査・血液生化学検査
貧血や炎症がないか、肝臓、腎臓などの内臓に異常がないかを調べます。
レントゲン検査
心臓、肺や骨、関節、内臓に異常がないかを調べます。レントゲン検査でも、歯をしっかりとチェックします。
健康診断の流れについて
- 予約はLINEでお取りください。月曜~土曜の午前中のみご予約が可能です。
- ご予約いただいた時間にご来院いただき、受付にお声がけください。
- 診察室にお呼びして、お話を伺った後、触診・視診・聴診を行います。
- 続いて血液検査、レントゲン検査を行います。
- 1週間以内に検査結果をご報告します。
検査結果が出ましたらお電話もしくはLINEでお伝えしますので、それからご来院ください。
検査結果に異常がなければ、飼い主様のみのご来院で問題ありません。
異常が見つかりただちに治療が必要なときは、ウサギさんと一緒にご来院していただき、治療へ進みます。
ウサギのよくある症状
下記の症状がみられるときに、よくある病気をご紹介しています。
少しでも気になる症状があるときは、お気軽にご相談ください。